
昭和(戦前)
ファシズムの台頭
1934年①(昭和9年)
上野英三郎(1872〜1925)の飼い犬だった
検察の勇み足は「検察ファッショ」と呼ばれた
上野英三郎(1872〜1925)の飼い犬だった
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1934年①(昭和9) ファシズムの台頭
1934年(昭和9)の東京・渋谷駅前に百貨店(デパート)が秋に開店することとなり、渋谷駅前に2年前に新聞紙上で紹介されて有名になった東京帝国大学農学部教授(故・上野英三郎)の飼い犬の秋田犬の銅像(初代)がハチも参列して建立された。また、中国との15年戦争(1931〜1945)が始まって4年目のこの年、やはり新聞紙上で上海事変時に爆弾を抱えて敵陣に捨て身攻撃で戦死した「肉弾三勇士」として紹介された3人の兵士の銅像が芝の青松寺の境内に建立された。この年、新聞を賑わしたのは、1927年(昭和2)の金融恐慌時に経営破綻した神 戸の鈴木商店の銀行担保となっていた帝人株が、財界人の出入りする番町会でやりとりされ、誰かが大儲けしたと一流新聞「時事新報」(武藤山治・社長)が報じた「帝人事件」で、3月に武藤社長が暗殺され、検察庁も動員されて大蔵次官が関わるなど政財界を巻き込むス キャンダルは、2大臣が引責辞任して斎藤実内閣が7 月に総辞職、マスコミ事件が時の内閣を倒した初めてのケースとなったが、最終的に検挙者はなく「検察ファッショ」と噂されることとなった。同月に「挙国一致内閣」の斎藤内閣の後任内閣に岡田啓介内閣が再び「挙国一致内閣」として誕生したが、10月に陸軍省新聞班が60万部を発行した〈国防の本義とその強化の提唱〉と題したパンフレットを発表、その中には「たたかひは創造の父、文化の母である」と書かれていた(陸軍パンフレット事件)。
年表
【1934年(昭和9)】
・3月 武藤山治(帝人社長)暗殺
・6月 文部省(現・文部科学省)に思想局設置
東郷元帥の国葬
・7月 岡田内閣が組閣
・9月 室戸台風
・10月 陸軍パンフレット事件
・11月 十一月事件
・12月 日本政府がワシントン条約を破棄
《世界の動き》
・1934年、アメリカでシカゴ万国博覧会(2回目)が開催
・1934年、ヒトラーがドイツの首相・大統領兼任となる
・1934年、ドイツとポーランドが不可侵条約
・1934年、中国共産党が根拠地の瑞金を放棄し「長征」へ
・1934年、ソ連が国際連盟に加盟
・1934年、ローズベルト大統領の「銀買上法」で中国から
銀貨が流出し、中国経済が恐慌状態に
・1934年、国際連盟の中国経済援助に反発した日本政府の
天羽(あもう)情報部長が批判(天羽声明)
日本と世界
時の政治
第31代首相・岡田啓介内閣