
平成
郵政改革・自民党の新憲法草案
2005年(平成17年)
小泉首相と竹中平蔵(左)
2006年/平成18年
2007年/平成19年
小泉首相と竹中平蔵(左)
テキスト本文
2005年(平成17) 郵政改革・自民党の新憲法草案
2005年(平成17)、大胆な行政改革を実践しようとする小泉内閣が「改革の本丸」と位置づける郵政民営化法案が衆議院本会議で否決され、廃案に追い込まれてしまった。そもそも明治5年(1872)に創業した日本の郵便事業は、鉄道路線の発達に支えられて成長し、 やがて全国のいたるところに郵便物が配達されるよ うになり、また、郵便局で切手を購入して通帳に貼ることで「郵便貯金」ができ、国は戦時に戦争国債を発行して郵便局で戦費を調達し、また健康診断が不要な 「簡易保険」の窓口でもあったので、全国にある郵便局は、日本独自の発達を遂げることとなった。戦後には、池田内閣で入閣した田中角栄郵政大臣は、許認可で設置できる特定郵便局(無集配郵便局)に地元名士を局長にして、選挙に活用する集票組織に育てあげ、その全国的な集票力を背景に「田中派」やその流れの「経世会」が力を持ち、また「全国特定局長会」が日本最大の政治圧力団体となった。政界で派閥に属さない小泉首相は、その政治目標の「行政改革」「財政改革」の行く手をふさぐ郵政民営化の実現をしがらみのある自民党議員ではなく、選挙民である国民に直接問いかけ、衆議院解散を「郵政解散」と命名して、郵政民営化に賛成か反対か、民営化に反対する議員を「抵抗勢力」として、同じ選挙区に「刺客」と称して対立候補を出馬させて、 選挙争点を国民に明確にしめす「劇場型選挙」と呼ばれた衆議院議員選挙で大勝した。約38万人の公務員が就業していた郵政三事業(郵便・郵便貯金・簡易生命保険)を民営化し、日本郵政株式会社が誕生することとなった。また、1955年(昭和30)の自民党結党50周年の2005年党大会にあわせ、現行憲法を改正する改憲案をまとめ、「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって」で始まる前文を安倍晋三(自民党幹事長代理、後の首相)が書いた新憲法草案は、現行憲法9条の「戦争放棄」の文字を残し、自衛軍を明記し、解釈で可能とする集団的自衛権はあえて明記せず、首相の衆議院解散権や各省庁への指揮監督権を盛り込み首相権限を強めた形で公表された。
年表
【2005年(平成17)】
・1月 改正刑法施行(強制性交等の性犯罪の法定刑引上げ)
・2月 ライブドアの株買い集めが注目される
生活保護世帯が100万人突破
・3月 島根県の県議会が「竹島の日」を制定
「愛・地球博」開幕(9月25日まで)
・4月 個人情報保護法が施行
小泉首相の靖国神社参拝、北京で1万人の反日デモ ・6月 政府提唱の「クールビズ」 開始
・7月 スペースシャトルに日本人飛行士(野口聡一)が搭乗
「知床」が世界自然遺産
・9月 衆院総選挙(郵政選挙)で女性43人当選(定数480人)
第3次小泉内閣が発足
・11月 自民党立党50年で新憲法草案を発表
・この年、ジェンダー・ギャップ指数が初公表、日本は58カ国
中38位
《世界の動き》
・2005年、中国民間機が台湾へ初フライト(1月)
・2005年、小泉首相の靖国参拝、北京などでデモ(4月)
・2005年、台湾の連戦国民党主席・胡錦涛主席会談(4月)
・2005年、英でグレンイーグルズサミット開催(7月)
・2005年、米南部でハリケーン「カトリーナ」(8月)
・2005年、北朝鮮が核放棄確約と6か国協議が初声明(9月)
・2005年、ドイツ首相にメルケル首相が就任(11月)
・2005年、「第1回東アジアサミット」が開催(12月)